おいしんごがそれっぽく語ってみた

四国の真ん中、高知県本山町の役場で林業担当をしています。森林のこと、環境のこと、社会のことなど、日々学んだことや考えたこと、感じたことをそれっぽく語っていきます。

所属が変わりましたの報告

この1月末で長らくお世話になった本山町役場を退職し、新しい所属先に転職?しました。報告も兼ねて、新組織でどのようなことをしていくか、綴っていきたいと思います。

 

本山町役場には、会計年度任用職員として働くこと3年と10か月、地域おこし協力隊の頃を含めると6年10か月、長らくお世話になりました。

協力隊として本山町に来たときは新卒で、働くということも田舎での生活も林業もなにもかもが初めての環境の中で、役場の方や協力隊の先輩方、地域の方に様々なことを教えていただきながら、本山町という環境に慣れていくことができました。

卒業のタイミングで感じたことは以下に綴っています。そう言えばそんなことを考えてたなということを振り返れます。

地域おこし協力隊3年間を振り返る - おいしんごがそれっぽく語ってみた

 

3年10か月の成果

地域おこし協力隊卒退後は、役場の会計年度任用職員として働かせていただきました。協力隊の頃以上に、行政の中にぐっと入って、行政、町役場がどのように運営されているかを知ることができました。

 

ちょうど卒退の年(2020年)に、森林環境譲与税と森林経営管理制度が始まったところで、役場としても林業専門で携わってくれる人材を求めていました。大学でのバックグラウンドや協力隊時代の現場経験を活かすことができるのではないかと思い、携わらせてもらうことになりました。

 

役場に入る際にひとつ決めていたのは、本山町の森林ビジョンを策定するということでした。

ビジョンの策定については、こちらにまとめています。

土佐本山コンパクトフォレスト構想ができるまで - おいしんごがそれっぽく語ってみた

 

この4年弱をまとめると

 

1年目:ビジョン策定に向けた計画

2年目:ビジョンの策定

3年目:ビジョンの実行に向けて走り始める

4年目:ビジョン推進のための組織づくり

 

と、ビジョン中心の期間だったと思います。それは今後もそうなるのでしょうけど、とにかくそこに集約できる4年間だったと思います。

 

役場入ったころは3年で次のステップへという想いを持っていたので、多少の路線変更や思いがけないご提案と想定外のつまずきもありながら、このタイミングで次のステップに踏み出せることになりました。

 

また、行政の中で仕事をする中で、行政の役割とその限界みたいなものを知ることができました。

行政の動きにくさ、話を通すときのめんどくささ、できないこと、とは言え行政にしか担えない役割みたいなことがふんわりと分かったように思います。

それは行政の中に入らないときっと分からないことで、それを知れたことも大きな収穫だと感じています。

 

新組織の立ち上げと転職

2月からお世話になる組織は「一般財団法人もりとみず基金」という財団法人です。

まだあまり情報が出てはいませんが、地元新聞やNHKには取り上げていただきました。 

早明浦ダムの森林保全へ3市町が基金設置 林業活性化へ連携|NHK 高知県のニュース

 

 

基金は、高知県の土佐町、本山町、そして香川県高松市が出資し設立する財団法人になります。

嶺北地域と香川県は以前から源流域と利水域という関係での交流を行ってきました。

水の安定供給という観点だけでなく、生物多様性や脱炭素という点も含めて、都市と山村、源流域と利水域が連携することで、両地域が持続可能な地域になるような仕組みを作ろうというのが大枠の目的です。

 

基金は行政出資によって設立されましたが、市民協働という点も重視しており、評議員や理事には民間の立場の方にも入っていただいております。今後は民間出資、市民寄付のようなことも考えており、市民ファンド的な機能も担っていくことも想定しています。

ちなみに私は職員でもありますが、理事の立場でも入らせていただいたております。

2024年1月18日に設立総会が行われ、評議員、理事、監事の皆さんが集まりました

 

具体的にどんなことやるのかというとこんなかんじ

・管理林の確保と管理の実施(森林経営管理制度の促進)

林業人材の育成

・森林関連産業の創出

高松市への販路開拓

・源流域・利水地域との地域間交流

・資金誘導(市民、企業寄付など)

・ネイチャークレジット創出

・研究分野との連携、共同研究

 

森林・林業という側面だけでなく、持続可能なまちづくりという観点から、森林の環境価値の評価、価値化、向上という点も担っていくことになります。

とは言え、後者だけをやろうとしてたら、経済的自立、持続性の限界が見えてくるでしょう。林業(木材生産や木製品の販売)的な経済的な部分が一定回ってこそ、地域の林業は持続的でありうるとも考えます。そうした観点でこれまでの流れを踏まえて、既存の組織、事業体と連携、支援をしていく。そこがやりきれない後者の部分については、主体的に動いていくというような整理で事業を進めて行ければと思います。

 

また今回の取組みのポイントは、利水地域であり都市部の高松市と連携している点です。

源流域のためだけの組織ではなく、両者がwin-winな形になるような仕組みを目指していく必要があります。それは水の安定供給だけでなく、木材を利用してもらうことでの都市部の空間改善、脱炭素の推進、森に来てもらって健康になってもらう、企業さんに来てもらうことで職場関係の改善、ストレス緩和、企業価値の向上などにつなげてもらうといったようなことも含まれると思います。

都市と山村地域が、行政だけでなく、事業者、さらには市民・町民の立場からつながりを作っていくことで、支え合いを強めていくことができれば良いなと思います。

 

 

私個人としても想い入れのある本山町の土佐本山コンパクトフォレスト構想の推進も、中間支援組織という立場として行なっていきます。

財団の目指す大枠は以上のような部分でありますが、それらは各町村での森林整備の取組みが進められてこそ実現できることです。

土佐本山コンパクトフォレスト構想を推進することが財団の目指す姿につながるものであり、財団で作る仕組みが当構想の推進に寄与するという考えから、財団としても本山町の構想推進の支援をしていきます。一方の土佐町の方でも現在森林ビジョンの策定が進められています。

 

本山町と土佐町は隣接する自治体ですが、自然環境も少し違いますし、社会的・歴史的背景にはそれぞれ特徴があります。それらを一緒くたにしていくよりは、個別のところは個別で進めて、一緒にやった方がいいところ(人材育成や木材販売、ネイチャークレジットなど)は財団を軸に連携してやっていくという棲み分けをしながら進めていこうと考えています。

 

わたしの原体験

私が林業という業界に興味を持ち、ここまで来ているのは小学3年生のころの環境学習がきっかけになっています。

その時の担任の先生は環境教育に熱心な方で、「総合的な学習」の時間で、近所にある鏡川高知市、あの坂本龍馬が泳いで遊んだ川でもあります)の源流を辿ろうという学習をしました。

そして土佐町と高知市の境にある、工石山県立自然公園に行き、川と森の繋がりや林業について学んだのでした。当時は森に興味を持ったという以上に、学校の外に出て身体を動かすことの楽しさの方が強かったように思いますが(半分遠足気分です)、自然と森というものを意識するようになったんじゃないかと思います。

おいしんごの源流へ〜工石山へ行ってきた - おいしんごがそれっぽく語ってみた

 

4年生でも同じ担任の先生のもとで、今度は香美市にある甫喜ヶ峰森林公園で学習をしました。そこでは誰でも森を楽しめるユニバーサルデザインを考えようというテーマで、小さな木製の橋やベンチを保護者と一緒に作ったことが記憶に残っています。

 

5年生の頃は担任の先生は変わったのですが、その方の紹介で、アメリカで開かれたこども環境サミット日本団体の皆さんと一緒に参加する機会を頂きました。地球温暖化オゾン層の問題など環境問題全般に触れるものでした。そこでどんなことを学んだかはすごく漠としていて覚えてはいないですが、環境問題というものを強烈に意識するようになったのは確かです。

ポスター展示もあって、その先生と一緒に森があることで川が豊かになり魚が住みやすい環境ができる、みたいな内容のポスターを作って展示したことを記憶しています。

 

そんな小学生時代の経験を通して、環境問題や森林・林業について興味を持ち、今に至ります。

そしてそのはじめ、原体験にあったのが、身近にある川が遠くにある森と実は繋がっているというテーマでした。

川や水というコンセプトは、普段は遠くの存在である森林をより身近に感じることができる接合点だとも感じています。

 

こうした自分の原体験も相まって、今回の森と水の繋がりを主眼に置いた当基金には強い共感を持ちますし、そうした組織にこれから関われることに大きな可能性と喜びを感じています。

 

 

以上、転職と新組織の設立報告をさせていただきました。

 

今年で齢30となりました。あまり区切りとかを意識するような人間ではないのですが、とは言え30代突入したタイミングでこうしたチャレンジに関わらせていただけることは何かの節目になるなと感じています。

また単純に、代表理事である三好さん、事務局長である尾﨑さんと一緒に働くことがとっても楽しみです。自分がこれまで経験してきたこと、学んできたことをしっかり発揮しつつ、新しい分野・領域も選り好みせずに吸収して見聞を広げていきたいです。

 

皆さん今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

おいしんご