町役場の林業担当として入って1年が経とうとしています。とても目まぐるしい日々でしたが、役場の中の仕事がなんとなく見えてきてとても有意義な時間が過ごせたように思います。
今日は忘備録も含めて、1年間の振り返りをしてみたいと思います。
この1年の仕事
役場では会計年度職員という、いわゆる臨時職員の枠で働かせていただいています(やっていることは林政アドバイザーみたいなことなのですが、正確にはそれではない)。
フルタイム(週5日)だと専業になってしまうのですが、自分は協力隊のころと変わらず月16日出勤の契約にしていただいていて、副業も可能な形態です。
役場の仕事としては、一昨年開始した森林経営管理制度の事務と、森林環境譲与税の活用に関する業務です。
国も県もいま森林経営管理制度推進に必死なので、そのあたりの事例発表などお話を聞く機会はたくさんありました。うちは今年度本格始動したので、まだなかなか進んでいないのが現状です。
実際にやりながらこの制度に関して様々な想いが積もります。そういうことをまた書いていけたらいいなと思います。
森林環境譲与税の活用に関しては、幸いにも正規の林務担当者が、基金にせずどんどん使っていこうという雰囲気なので、いろいろアイデア出しをさせてもらっています。
新しいものを打ち出していくという意味ではクリエイティブな仕事で楽しい面もありますが、目先の利益だけでなく、将来の町の森林・林業に対して残っていくような形で使っていかないとと思うと、その責任はとても重いものがあります。
また、自分も大学を出てまだ4年間で、経験も知識も極めて乏しく、その範囲内に案も限られてきてしまうので、本当にこれでいいのだろうかと思い悩む日々です。
ひとまずこの1年でできたこととしては
・森林経営管理制度1地域の意向調査とりまとめと、今後の方針の決定。事業体との調整。
・役場林業業務のICT化に向けての提案(QGISによるサポート、来年度ドローン導入)
・林業技能者の育成として、町主催のチェーンソー特別教育とチェーンソーレベルアップ研修の開催
・来年度動き始める森林・林業ビジョン作成に向けての提案
といったところでしょうか。準備的な部分が多かったので具体的に実行に移せた成果はわずかでしたが、来年につなげられるように頑張っていきたいと思います。
あとただの愚痴なのですが、こうした仕事を臨時職員の待遇でしているのは本当に身を削ってしまっているなぁと思っています。林政アドバイザーの待遇が悪い話も聞いていましたが、市町村臨時職員は正直誰にもおすすめできない仕事ですね。はやく自分の給料は自分で決められるようになりたいと最近はつくづく思います。
副業として、協力隊のころからお世話になっている自伐型林業グループの林業現場にバイトに行っています。役場でデスクワークしつつ、副業で現場仕事、という形はけっこう自分に合っているなと思います。時には数週間間が空くので毎回筋肉痛に苦しめられますが…(笑)
また、林業現場に入ることで、現場での課題や悩みを直接聞けるというのもすごく大事だなと感じています。もちろん特定の個人に偏って役場の仕事はしていてはいけないのですが、役場にいると現場の生の声って頑張って聞きにいかないとなかなか拾いに行けないように感じています。そういうのを実感しながら、どういった事業を打ち出しけばいいかを考えていければなと思います。
また、協力隊のころからお世話になっている高知県林業大学校でQGISの授業の講師補助などもやらせていただいております。
自分もまだまだQGISの使用に慣れてきたというぐらいなのですが、こうしてお手伝いをさせていただく中で、新しい使い方や便利な機能も改めて知ることができるのでとても良い機会をいただいているなと思っています。
高知県は県を挙げてQGISをはじめとしたスマート林業に力を入れていこうとしているので、GISが使える技術者というのはこれからどんどん需要が出てくると思われます。
QGISに限らずドローンやスマート林業全般の知識もどんどん入れていきたいなと思っています。
役場に入って思うことと、この1年
個人的に、役場に入ってよかったのが、行政的な情報がどんどん入ってくることです。
学生のころに林政学を専門分野のひとつにしてきた自分としては大好物をいただいているというか(笑)、一般の人にはクローズにしている研修に出られたり、リリースされたばかりの新鮮な情報に触れられたり、そういうのを楽しんで仕事をしています。
その情報の最前線は森林経営管理制度なのですが、林野庁の担当室の方から直接レクチャーいただいて、林野庁がなに考えてるかとか見聞きできたのも面白かったです。
あとは、仕事をしていると「行政の限界」みたいなものを感じる機会も多々あります。民間にがっつり入ったことがないので何とも言えないのですが、やはり行政の最大の特徴は公共性なのでそこを常に考慮することが問われたり、お金の使い方みたいなのも民間ほどスピード感が持てないなどの部分があったりします。
まあ限界というか、そういうものだという理解をすればいいのですが、実際に入ってみての実感としてはあります。
行政ができること、行政がすべきことと、民間ができること、民間ができること、みたいなことをよく考えた1年だったと思います。
また、今年度はコロナの影響もあって、ほとんど県外に研修や旅行に行くことはありませんでした。いつもは毎月のようにどこかに出かけていたので物足りなさがどことなくあります。
ただ、コロナのおかげというのか、多くの講座やシンポジウムをオンライン開催してくださるようになりました。直接人と会えなくないというのは残念ではありますが、地方からどこかに出ていくのは金銭的にも時間的にも大きなハードルではあるので、大変ありがたいことです。情報として得るという点だけならすごくいい形だと思います。
森林総研などもYoutubeアカウントで講演をたくさんアップしてくださっていて大変勉強になっています。
先日、岐阜の森林文化アカデミーの横井先生の最終講義をオンラインで拝聴しました。
自分は不覚ながらもライブでは見逃してしまったのですが、ありがたいことに3月中限定で動画を公開してくださっています。
横井先生の最終講義限定配信です! : 岐阜県立森林文化アカデミー
森林管理技術、造林技術、森林技術者の本質が非常にわかりやすく述べられていて、とても感銘を受けました。全体通してうなずきの連続だったのですが、「もっと知識知を取り入れることが必要」というのはすぐに始められることだなと思いました。
一方で、横井先生が目指されるような技術者が、今の日本にどれぐらいいるのか。ひとつの現場で張り付いて、順応的管理を実践されている方がどれぐらいのか。具体的な森林に対峙して、科学的合理性をもって選木、作業の選定を行える技術者がどれぐらいいるのか。
残念ながら大きな流れとしてそうした人材を作っていこう、それが実践できる環境を作っていこうという機運はまだまだ薄いように感じます(その意味でも奈良のアカデミーには期待しています)。
嘆きとともに、自分はそういう技術者になりたいと、目標を示していただいているようにも思います。
さて、来年度も今年度同様に、役場の林務担当を務めていくことになります。
今年は一年目ということもあって、初めてのことばかりだったのでなかなか思い切った取り組みができなかったのですが、その中でも準備してきたことがあるので、それらを少しずつ実行に移していきたいと考えています。
特に、本山町の森林・林業のビジョン作りを行おうと考えています。場当たり的に行ってきた林業政策にきちんと芯を通して、持続可能な森林管理行政を実践していきたいと考えています。
また、個人的にも3年後ぐらいの大きな目標ができたので、仕事とは別にそちらの準備も粛々と進めていければと思います。
書きたいこともたくさん溜まってきたし、読みたい本もたくさん積まれているのですが、ひとまずはやらなきゃならないことをやらないとというかんじです。
ということで、諸々報告でした。
来年度もよろしくお願いします。
おいしんご