おいしんごがそれっぽく語ってみた

四国の真ん中、高知県本山町の地域おこし協力隊(林業振興活動員)として活動しています。森林のこと、環境のこと、社会のことなど、日々学んだことや考えたこと、感じたことをそれっぽく語っていきます。

利用のその先へ ー森林生産システム研究会に参加して

11/24,25に開催された森林生産システム研究会に参加してきた。

森林生産システム研究会が主催(共催:森林利用学会)する当研究会は、今年で22回目だそうだ。全国各地の現地研修と議論の場、という形のようである。

 

22回目の今回は徳島県三好市が会場であった。位置としてはぼくが住む本山町の隣の隣で、会場までも車で一時間と比較的近くなのもあって、参加させていただいた。

 

森林生産システム学は、大きくまとめると林業工学の分野に含まれるもので、森林政策や林業経済学を専門にしていた自分(学部卒で偉そうに言うな←)としては、ディスプリンの違う場に行くのは少し緊張するなぁという気持ちだった。

しかし、詳しくは後述するがそれほど専門的というよりは、林業もしくは森づくりという大きな論点に対して、森林生産システムの思考がどのように働いていくか、という風な広い論点提示がなされたので個人的には話に入っていきやすく、興味深い議論が聞けたように思う。

 

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プログラムは以下のようなものであった。

11/24 現地見学会

  • フェラーバンチャザウルスロボ、ロングアームグラップルによる皆伐作業の見学
  • コンテナ苗とツリーシェルターを用いた再造林技術の視察

 

11/25 シンポジウム

  •  基調講演:杉山宰による「選木育林技術」の紹介
  •  事例紹介:二ホンジカ生息地におけるコンテナ苗を活用した再造林技術
  •  車両系作業システムによる皆伐と直送システムの試み
  •  パネルディスカッション

 

 

現地見学会 

初日の現地見学会は、三好市の山奥に車でつらつらと登っていった現場。道脇や林内には雪もうっすらと積もっていて、風も強く非常に体に堪える見学会だった。

 

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雪が見られる

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落葉樹も大きく占める、本山じゃなかなか見られない光景

 

皆伐作業現場見学

フェラーバンチャザウルスロボ(以下ザウルス)とロングアームグラップルによる皆伐作業の見学は、機械が動いているのを見るだけだった。

ザウルスでの伐木作業は動画で見たことはあったが、実際に見るのは初めて。

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木の下部を掴んで刃を押し付けて、ギチギチギチバッチンと数秒で木が伐れる。木が倒れるのに合わせて機械を動かして倒れる場所と置く場所をコントロール。簡単にやっているように見えたが、あの動きがなかなか難しいんだろうなと思った。

 

ザウルスのすごいところは、ヘッドにバケットとグラップル機能が付いていることで、木を伐りながら道も掘れる。道づくりは基本二人(先に木を伐る人と、後ろから道を掘っていく人)で行われていたのが、一人でできるようになっているということだ。

実際この日の作業中も、木を伐りながら粗道を作って、より奥の木も伐りに進んでいるようであった。資料ではこの機械で2.5m幅の道が作れるということだが、ほんまかいな。

 

ロングアームグラップルはそれほどゴリゴリ機能しているようではなかったが、アームが12m伸びることを利用して、道から離れたところに伐られた木でも集材できるというものである。

この現場では、ザウルスの腕が届くところの木はザウルスで伐り、それ以外のところをチェーンソーで伐倒して、ロングアームグラップルで集材するというシステムが取られていた。

造材はすべてハーベスタである。そしてフォワーダ2台を使って山土場まで持っていく。高性能林業機械のオンパレードであった。

 

 

 再造林現場視察

次に見に行ったのは再造林、いわゆる植林が行われている現場である。

ここは日本全国の例にたがわず二ホンジカの生息密度が高まっているところで、それの対抗策を色々と講じている現場であった。ここではツリーシェルター(ヘキサチューブとも呼ばれる)を用いた植林が行われていた。

 

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ツリーシェルター シカに食べられるのを防ぐが、上に出たやつが食べられることもある。多少成長も妨げられる。

 

驚くべきはその広さで、連続的ではないとはいえ120~130haの皆伐地が広がっていた。これほどの広さの皆伐を見るのは初めてで、その数字を聞いた時は驚愕してしまった。

話によると、平成24年から皆伐をスタートし、平成25年から植林を始め、今年までずっと皆伐-再造林が行われているという。

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その皆伐のスピードに追い付くために、植栽時期を拡大し通年で植栽が行える技術を開発する必要があるということで、試験的な試みも様々行われていた。

 

2日目のシンポジウムの際にも述べられたことだが、夏場に日照りが続くと土壌が乾燥してしまうため普通の苗だと乾燥害を受けて活着が妨げられる。そこで、根回りの水分を保つように作られているコンテナ苗というのを用いて、そういった夏場でも活着率を上げるという試みであった。

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左が裸苗、右がコンテナ苗。時間がたってもコンテナ苗の根の部分は湿っているため乾燥に強い。

 

また、シカ対策としてのツリーシェエルターの有効活用、植栽作業効率をあげるための方法、さらには植栽現場にシカ捕獲のワナを設置して林業者がシカ捕獲を試みる、その方法やワナの開発というものも行われていた。

狩猟者が減少し、奥山での捕獲が難しくなった現在において、現場に頻繁に足を運ぶ林業者が捕獲も行うというのは、合理的そうではあった。実際、この1年で60頭ほどのシカを捕獲することができたらしい。

 

 

 2日目 シンポジウム

基調講演:選木育林技術

基調講演は、選木育林施業で全国的にも有名な杉山氏であった。

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選木育林施業をざっくり説明すると以下のようになる。

・優良木を620本/ha選木・マーキングする(優良木同士の間隔が4mとするとこの本数)

・20年生~30年生段階で優良木のみの600~700本/haの成立本数とするため、強度の間伐(間伐率4~5割)を早期に行う。

・その後は、50年生で400本/ha、長伐期の際は150年生で200本/haを目指して随時択伐を行う。

・利点として、①マーキングされていない木は間伐される木であるため選木の手間が省ける、②マーキングされたものに限った枝打ちによる省力化、③強度間伐による下層植生、広葉樹の侵入を促進する。等

 

詳しくはこちら。

杉山宰「選木育林と早期仕上げ間伐」

http://www.pref.tokushima.jp/_files/00098786/senbokuikurintosokishiagekanbatu.pdf

 

施業地のほとんどが40年~50年生の人工林という現状において、すぐに使える技術、というわけではなさそうだが、自分が一から、もしくは若齢人工林の管理を行う際は参考になる考え方だと思った。

おそらくポイントは早期に行う、ということなんじゃないかと思う。

この選木育林を50年生で行っても、形状比の偏り(細くて高い)が出ていて、強度間伐はどうしても尻込みしてしまう。林地にあった間伐方法を見極める力がなにより必要だ。

 

 

コンテナ苗を活用した再造林技術

こちらは初日の現場視察について、資料を用いてより詳しく解説された。

特に、シカ対策として皆伐―再造林の現場で林業者がシカ捕獲を目指すという考えは面白いと思った。また、獣害対策も含めて、皆伐から再造林をトータルで計画される必要性、そのための人材が求められているということが強く述べられていた。

現在、皆伐するとしてもそれ単体としてしか考えられておらず、再造林からその先までを計画、マネジメントするまでに至っていないということらしい。

 

 

車両系作業システムによる皆伐と直送システムの試み

現地視察をさせていただいた皆伐現場を受け持っている三好西部森林組合の池田班の班長さんが登壇。

現場での皆伐・間伐の作業システムについての説明と、材の売り方として市場を介さず自ら製材所に直送して材を高く売るということを行っていること、大手製材所向けに中間土場を設けて販路を拡大していることなどが報告された。またその他にも、緑の雇用生を積極的に雇用して担い手育成にも努めていることなども紹介された。

 

三好市内の製材所と自ら繋がって販路を拡大することや、地域の製材所を維持したいという意志をすごく感じ、班長さんが「山師なんだからそういう部分まで考えて林業やるべきだ」的なことを言っていたのは印象的だった。

 

 

総括-パネルディスカッションを振り返って

パネルディスカッションでは、司会の先生から以下の3点が論点として持ち上げられました。

 

皆伐は様々な材(A~C)が大量に出てくる。その仕分け方から販売までを効率的にするには。

②シカ増加による新たな再造林の方法、一貫作業システムについて

③次世代の森をそもそもどう考えるか。これまでと同じように植林し、同じような森を作っていくかべきなのかどうか。

 

個人的に印象に残ったのはやはり③の論点である。

現在は、保育から利用の時代と言われていて、今回見たような大皆伐-再造林地(再造林されていない場所も数多くある)が全国的に広がってきている。

人工林が伐期(計画として伐るべき時期、ぼくはこの概念自体も懐疑的ではあるのだが)に達していること、人工林の林齢が全国的に偏っていること、国家戦略として木材自給率50%が掲げられ増産が叫ばれていること、材価が下がり量をさばく(いわゆる薄利多売)でないと採算が取れない、というのがその理由である。

 

ぼくは今回見た100haを超える皆伐-再造林地は、現在の林業の最前線の形であるなと感じた。

それはこうした場所が全国のあちこちに出現しているということと同時に、これが次世代の林業を考えるべき場所になっているということを表しているからだ。

 

 

たとえば、現地視察した再造林地は植栽本数が1500本/haであった。一般的な標準は3000本/haと言われていて、密植で有名な吉野では桁違いの1万本/haである。地域特性にもよるが6000本/haや8000本/haとする林家もいる。そういうのと比較すると1500本/haというのは間違いなく疎植と言える。

しかし今回の現場のようにシカ対策としてツリーシェルターを用いるとその分経費もかさみ、その分を植栽本数を減らして省力化する、いわば経済的な理由で疎植が選ばれているわけである。

 

一概に密植が良く、疎植が悪いというわけではない。

疎植は、間隔が広いため肥大成長(太らせる方向の成長)が良く、年輪幅も広がるが、太い材を早く作れる、根元太り(「うらごけ」と呼ばれる)が極端で材の歩留まりは悪いがしっかりした木になる、といった特徴がある。

こうした疎植再造林地は、増えているという(実際に割合としてどうかは分かりませんが)。

こうした疎植をおこなった森が作られた場合、今後どのような森になっていき、どのような材が生産されるようになるのか、ということは同時に考えられていかなければならない。

 

林業は時間スパンの長い産業だ。数十年先のことを思い描かなければいけない。

これまでは、保育の時代で、利用のことを考える必要があった。

しかし、利用の時代になった今だからこそ、利用の部分も考えつつ、利用のその先を考えた林業を描かなくてはいけなくなっている。

 

もちろん、将来のことは誰にも分からない。

でも、その先のビジョンを思い描き計画していく必要はあるはずだ。

 

再造林もさることながら、皆伐とともに語られるのが再造林放棄の問題だ。

よく言えば手を加えず天然更新させようという考え、悪く言えば経済的な理由で手をかけられない、という状態である。天然更新して成林するなら、それも悪くはないだろう。

人工林が増えすぎているというなら、広葉樹林・天然林を増やしていくことも考えていいかもしれない。また広葉樹林で行われる林業というのも考案されてもいいと思う。

 

 

日本の林業も各地域特色のある歴史を歩んできたし、林野行政も様々な変遷をたどってきた。

そして戦後、そして高度経済成長期を超えて行われた「拡大造林」は大きな画期となり、その結果日本の森林の4割に上る土地が木材生産を主目的とした針葉樹中心の人工林へと姿を変えた。それは日本の農山村の景観を大きく変えた社会の大転換事件だったと言える。

こうして日本において近代的林業のスタートを切ったと言える。

そしてその近代的林業は、それが決定した伐期を向かえ、新しい森に変えられようとしている。言うなれば、第1期から第2期へと転換されようとしているのである。

皆伐時代と言われる現在は、次期林業への転換時期なのだ、ということをひしひしと感じている。

 

次期林業がどのようなものになっていくかは、様々なことが論ぜられていると思う。そしてそれを担う人材をどのように作っていくか、林業技術者だけでなく地域林業や森林全体をマネジメントしていく人材の育成も重要になっていくだろう。

 

利用のその先へ、それをガツンと考えさせられた研究会であった。

一現場作業員として、どこまでそれを考えられるか、また実際の現場作業に反映させられるかとなると限られるかもしれないが、それはまた別のお話だ。

 

お世話していただいた徳島県庁と三好西部森林組合の皆さま、ありがとうございました。

 

 

 

追記

情報交換タイムの際に、ちょっと前に話題になった林業現場で使用される「悪路走行用高床四輪駆動2トンダンプ」の再開発に関する署名のお願いがされました。

排ガス規制等の理由で、パワーのあるダンプの製造が中止されている現状で、新しいダンプは木材を積んでも林内を走れない、山を登れないという状況のようです。開発には、メーカーもお金がかかるようで、なかなか首を縦に振らず、しようと思ってもできていないというところのようです。一現場作業員として、ご賛同・ご署名のほどよろしくお願いいたします。

 

Change.org 「個人や小規模農林建設事業者の事業継続のために、絶版になった悪路走行用高床四輪駆動2トンダンプを再開発してください!」

www.change.org

 

 

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