おいしんごがそれっぽく語ってみた

四国の真ん中、高知県本山町の役場で林業担当をしています。森林のこと、環境のこと、社会のことなど、日々学んだことや考えたこと、感じたことをそれっぽく語っていきます。

”土”について考えてみる  -「18cmの奇跡」を読んでー

こんにちは、おいしんごです。

夏真っ盛りですね。暑いです。ほんとに。

お盆は何も予定がほぼないので規制もせずぐーだらしています。書き溜めていたネタも少しずつ消費したいなと思う今日この頃です。

 

今日は最近読んだ「18㎝の奇跡」という本について。生協の本コーナーで見つけて表紙見て衝動買いしました。

 

筆者は陽 捷之(みなみ かつゆき)さんという土壌学の研究者です。環境問題についてさまざまな本を書かれています。

 

 

土壌学者が書いた本ということからも察せる通り、これは”土”についての本です。

中身は、詩集のようになっていて、カラー写真と共に見開き1ページにつき1節という形で構成されています。

内容はすべて土に関すること。

第1章は「土壌史」。土の生成や粒子のこと、生物に繋がることなど比較的科学的な話です。

第2章は「人間圏」。文明と土壌の関係を主に扱い、これまでどれだけ人間社会が土壌にダメージを与えてきたかが述べられています。

第3章は「土の中の宇宙」。土壌から自然の摂理、生態的メカニズム、さらには食の話まで発展しています。

第4章は「風にきく 土にふれる」。社会や自然との共生、生き方など環境倫理的な視点に移っていきます。

短い文章で、でも科学的な話も出しながら「土と生物」「土と人間」「土と社会」の関係はどのようなもので、どうあるべきかということが述べられています。

 

いくつかセンテンスを紹介したいと思います。

まずは、この本のタイトルである「18㎝の奇跡」の由来となった節を紹介します。

第1章の「薄氷上のいのち」という節です。

 人類が生きるために使用できる土壌を

 地球の陸地表面においてみると

 それはたった18㎝の厚さにすぎない。

 

 人類が使用できる水を

 この18㎝の土壌に満たすと

 たかが11㎝にすぎない。

 

 私たちが安心して呼吸できる

 酸素のほとんどは、

 地上から約15㎞上空の対流圏にしか存在しない。

 地球が自ら創り出した

 貴重なバリアーである成層圏オゾン層は、

 上空約40㎞にあり、

 押し縮めて地球表面に持ってきたとしたら

 たかが3㎜にすぎない。

 

水や酸素はもちろんですが、土も人間が生きていく上で必要不可欠です。土がなければ植物、食物は育てられないからです。それらが地球にどれだけあるか、実際数字で見せられるととても貴重なことを実感します。私たちは18㎝の土台に支えられているわけです。

 

現代社会では、街はコンクリートで敷き詰められて、土を感じるところが非常に小さくなっています。ましてやその上で、中で、生命が、自然のメカニズムに従って命をはぐくみ繋がっているなどということを感じることなど皆無です。

 

しかし、自然のメカニズム(摂理と言っていいかもしれません)、循環システムに私たちは無意識にでも依存していて、支えられています。

土壌も呼吸をしています。それによる大気の循環、浄化システムも私たちの生を見えないところで支えてくれています。

しかしそれも土壌が健全でなければ正常に機能しません。

そういったことを実感することは現代の社会に生きる人々には難しいし、さらに直接それと関わっている第一次産業の分野でも過剰な化学肥料や農薬の使用によって、土壌の健康状態を損なわせているそうです。

 

環境保全に普段から特に意識していない人ならしょうがないかもしれませんが、この視点は環境を守ろうとする人にも欠けがちな視点です。

 

環境を守ること、安全な食を確保すること、さらには食と直接つながる人々の健康を考えること、これらの根底にはすべて健全な土壌があります

そこへの意識が欠けてはこれらをきちんと語ることはできないでしょう。

第4章の「土壌と健康」という節です。

 食べ物は

 水と土壌と大気から生産される。

 生き物はすべて、

 土壌の肥沃度に応じて、

 健康か不健康になる。

 

 土壌を知らない人が、

 どうして

 人健康について理解できようか。

 

繰り返しになりますが、土壌は生命の根本です。

土から生まれ、土に生かされ、土に還る、とも言えるでしょう。

 

それへの正しい理解と配慮があって、健康な社会と持続可能な社会を見出す思想が描けるのかもしれません。

 

第4章の「『環境』とは生き方」という節を紹介します。

 環境とは人と自然の間に成立するもので、

 人の見方が深く刻まれた歴史でもある。

 

 人の生業や文化や文明を離れた環境というものは存在しない。

 環境とは人のい生きざまそのものである。

 すなわち、

 環境を保全するとか改善するということは、 

 とりもなおさず、

 わたしたち自身を保全するとか改善することに他ならない。

 そのためには、

 わた地たちの生き方と心の豊かさが必要になる。

 

最後に、本書の最後に引用されているオーストリアの哲学者イヴァン・イリイチが「土についての宣言」での言葉を紹介したいと思います。

 

    地球という惑星、

 世界の飢餓、 

 生命への脅威などを語るエコロジストに対して、

 われわれ哲学者に強く求められているのは、

 土という者を謙虚に見下ろすことである。

 われわれは、

 土の上に立っているのであり、

 地球の上に立っているのではない。

 われわれが生まれるのは土からなのであり、

 排泄物や亡骸を委ねる先もまた、

 土なのである。

 

「土という者を謙虚に見下ろすこと」。自然と謙虚に向き合うこと。

環境倫理として非常に大事な姿勢だと思いを伝えてくれていると思います。

 

読みやすくてカラー写真も綺麗なので、よかったら是非読んでみてください。

Amazon.co.jp: 18cmの奇跡: 陽 捷行(みなみ かつゆき): 本

 

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では、今日はこのあたりで。

読んでいただきありがとうございます。